年金研究センター

年金運用に関する調査・研究/クォンツ・レポート

年金研究センター
研究員 岩本 純一

第5回:格付け推定モデル
「レーティング・ドクター」

 クォンツ・レポートの第1回では事業債投資に必須の「信用リスク」の評価・分析についてお話しました。株価を用いて日次ベースで信用リスク評価を行う弊社独自のオプションアプローチ・モデルをご紹介しましたが、今回はもう一つのアプローチである財務分析による信用リスク評価についてお話します。

 財務分析をもとに債務返済能力を判断する手法は必ずしも目新しいものではなく、代表的なものとしてはAltmanのZスコアモデルが有名です。

Z=1.2(運転資本/総資産)+1.4(留保利益/総資産)+3.3(利息支払・税引前利益/総資産) +0.6(自己資本市場価値/負債簿価)+0.999(売上高/総資産)

 このZの所に、格付けを用いたものが格付け推定モデルであり、弊社の場合はMoody's格付を用いた独自モデル「レーティング・ドクター」を開発しております。Moody'sは多種多様な格付情報を長期にわたり保有しており、Moody'sベースの格付が付与できれば、この情報を活用して信用リスクに関する様々な分析が可能になります。一方、Moody's側では格付けにおいて各企業のシナリオが最重要であり、財務分析のプライオリティは高くないとの態度を取ってきましたが、格付と財務比率の関係が年々強まっていることが分かっています。
 格付推定モデルは精度の高いモデルを作っても、それ単体では格付け会社の格付に近づくだけであり、それよりもどのように使いこなしていくかの方が大切です。弊社では「レーティング・ドクター」を次のような目的で使用しており、独自の格付判断をタイムリーに下せる体制を構築しています。

弊社クレジット・アナリストが発行体のP/L・B/S予想を行い、現行の格付けの妥当性 を検討する。
Moody's格付を取得していない発行体について、同じ基準で格付けを付与する。

 余談ですが、最近では発行体企業側でも格付推定モデルを活用する例が見られるようになってきました。財務コンサルティング会社と協働で自社が経営目標とする財務指標を組込んだ格付モデルを作成し、中期的な格付の改善を目指しているようです。


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