| 年金運用に関する調査・研究/クォンツ・レポート | |
年金研究センター 主任研究員 奥山 修 | |
第9回:浮動株比率を考慮した株価指数について | |
今年に入り、MSCIが指数算出方法として浮動株比率によるウェイト調整を導入し、同時に時価総額カバー率を引き上げることを提案しており、特にその日本市場への影響が市場関係者の間で注目されています。最終的には年末までに実施の有無も含めて決定されることになっており、現状では変更の実施も含めて未確定な部分が多いのですが、先月MSCIより詳細提案(1)が出されており、その内容を踏まえて浮動株比率を考慮した株価指数について考えてみたいと思います。 | |
| 株価指数は、これまで株価を発行済株式数で加重して求めるものが主流でしたが、昨年来FTSEやDJ STOXX、DAXなどが相次いで浮動株を考慮したウェイトへの移行を発表しており、また東証からもスタンダード・アンド・プア-ズ社と共同開発したS&P/TOPIX150が昨年8月に公表されています。今回のMSCIインデックス改定の動きは、こうした世界的な株価指数の流れを受けたものといえます。 | |
| 背景としては、近年株式市場において、新規公開株や民営化を実施する大企業の中に浮動株比率が低い銘柄が多数存在するため、ベンチマークを意識したポートフォリオのリスク管理やパッシブ運用を行う際に、浮動株比率の低さがこうした銘柄群の需給面へ大きな影響を与えていることが問題視されている点が挙げられます。浮動株とは、企業の発行済株式総数のうちで投資家が市場で購入可能な株数を指しており、企業間持合・政府保有・創業者など個人大株主保有・従業員持株会など政策的に保有されている株数を発行済株式数から控除したものと定義されます。また、放送・通信事業者等に課せられている外国人保有規制についても、外国人投資家にとっての浮動株算出に際しては考慮されるべきものと言えます。 | |
| 浮動株比率ですが、その算出を客観的に行うことはそれほど容易なことではありません。実際、政策的な保有であるかどうかを特定することはかなり困難であり、例えばS&P/TOPIX150インデックスでは、大株主上位10位のうちで、投信や信託勘定、外国証券会社などの保有は純粋に運用目的であると仮定し、それ以外を政策的保有株とみなしています(2)。MSCIからは具体的な算出方法に関して提示はまだありませんが、利用可能なデータの制約などから、日本株に関しては恐らくS&P/TOPIXと同様の方法を採用すると思われます。 | |
![]() |
| こうした指数算出方法の変更による影響として、以下の2点が考えられます。一つは、グローバル投資におけるベンチマークとして用いられることが多い、MSCI EAFEやWorld Indexにおける日本やドイツ・フランスなど浮動株比率が相対的に低い国の構成ウェイトの低下(上表参照)、もう1点は各国指数における採用銘柄とそのウェイトの変更です。具体的な影響に関する分析は現在調査中であり別の機会に譲りますが、MSCIのように投資家への普及率の高いインデックスの変更は、思惑的な取引も含めて市場への影響度は小さくないといえます。但し、MSCIでは指数変更については市場へのインパクトを緩和するべく段階的に実施する可能性も示唆しています。 |
| 日本市場に関して言えば、昨年度後半TOPIXに採用された光通信に代表されるように、浮動株比率が低くかつ時価総額の大きな銘柄が、ベンチマーク運用を行う投資家に与える影響は大きなものと言えます。一定の客観性と透明性を持つものであれば、浮動株比率を考慮した指数は歓迎すべきものかもしれません。 |
|
(1) 「MSCI Consultation Paper,Sep.17,2000」 同社Webサイト(www.msci.com)参照。 (2) 広範な持合いが存在する銀行については、浮動株比率を一律0.4としています。 |
|
|年金研究センターTOP|クォンツ・レポートTOP| |