| 年金運用に関する調査・研究/クォンツ・レポート | |
年金研究センター 研究員 矢野 学 | |
第16回:リバランシング(2) | |
前回は、年金資産運用におけるリバランス問題を紹介しました。リバランスを全く行わないB&H(Buy and Hold)戦略との比較で、@CM (Constant Mix) 戦略、API (Portfolio Insurance)戦略 の2つの手法を考えてみました。そして、それぞれの戦略では、相場状況 (系列相関の程度) に応じて、異なった結果が得られる可能性があることを説明しました。 | |
| 今回は、これらの戦略を採用した場合にどのようなリターンとなるのか、シミュレーションを用いて実際に検証してみます。株式・債券・短期資産の3資産を想定し、シミュレーションでは表1のようなパラメータを用いています。また、株式のリターンに関して、期待収益率の変動をAR(1)モデル rt=μ+art-1+et (rtはt期の株式リターン、μは株式の期待収益率(シミュレーションの場合には7.0%)、etはt期のランダム変数、aは定数)を用いて生成した数値系列を用いています。株式のリターンに正の系列相関がある場合としてa=0.30およびa=0.10、系列相関がない場合としてa=0、負の系列相関がある場合にはa=−0.10およびa=−0.30としました。また、当初の政策配分比率は、株式45%、債券45%、短期資産10%としました。 | |
![]() |
| シミュレーションではこれらのパラメータをもとに、@CM戦略では毎月当初の配分に戻した場合、API戦略では当初の配分から算出されるリスク量 (5%の確率で発生する損失額)に等しくなるように毎月配分にした場合、BB&H戦略では当初配分からリバランスを一切行わない場合について、60ヵ月分の累積リターンを100回算出しています。これらの結果は図1および図2のとおりになります。 |
![]() |
![]() |
| 図1では、CM戦略とB&H戦略の60ヵ月累積リターンとの格差を系列相関の程度の別に図示したものです。同様に、図2ではPI戦略とB&H戦略の累積リターン格差を示しています。図からも明らかなように、正の系列相関が強い(a=0.30)ようなケースでは、PI戦略がB&H戦略に対して有効なリバランス戦略となり、逆にCM戦略ではB&H戦略に劣後してしまうことになります。一方、負の系列相関が強い(a=−0.30)ようなケースでは、PI戦略はB&H戦略に大きく劣後しますが、CM戦略が相対的に有利なリバランス戦略となることがわかります(本来、系列相関がない(a=0)ようなケースでは、各戦略は中立のはずですが、シミュレーションに用いたパラメータ(正の期待収益率など)の関係で、ここではPI戦略が有効な結果となっています)。 |
| 以上からもわかるように、シミュレーションによる分析でも、その前提となるパラメータによってそれぞれの戦略による優劣関係は変わってくるために、分析結果の優位性の判断には留意が必要です。また様々なリバランス戦略の有効性がバックテストによって検証されていますが、それらは単に過去のあるサンプル期間における検証に過ぎないことから、期間の取り方によっても結果が大きく変わってくる可能性があります。それぞれの戦略の有効性についてはよく吟味してみることが大切といえるでしょう。 |
| 今回は、今後の相場動向 (資産リターンの系列相関) についての予測を持つ場合や、富の水準に応じてリスク許容度を変更する場合についてのリバランス戦略を考えました。しかしそれらの前提を全く変更しない場合には、もちろんPAAを維持するCM戦略が最適な戦略となります。そのような場合のリバランスのルールとしてはいくつかの方法が考えられますが、大きく分ければ@リバランスの頻度 (どのようなタイミングで行うか) 、Aリバランスの幅 (どれだけ行うか) に集約できると考えられます。次回はそれらをどのようにして決めればよいのかや、実際の運営上の問題点などについて、最近の研究動向をもとに考えてみたいと思います。 |
|
|年金研究センターTOP|クォンツ・レポートTOP| |