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主任研究員 藤林 宏*

第18回:投資パフォーマンス基準の国際認証について

IPCと国際認証
 運用会社が、新たな顧客の獲得を目指して、その投資パフォーマンスの実績を提示する際、適切な情報な情報提供がなされることを目的として、投資パフォーマンス基準(1)が導入されています。わが国でも、日本証券アナリスト協会が「日本証券アナリスト協会 投資パフォーマンス基準(SAAJ-IPS)」を1999年に策定し、2000年4月以降に運用機関による準拠が可能となっていますが、今般(2002年6月)、SAAJ-IPSが投資パフォーマンス協議会(IPC)による国際認証を得ました。
 IPCは、そもそも投資パフォーマンス基準の国際版ともいえるグローバル投資基準(GIPS)の策定・解釈および普及を目的として設立された国際組織です。IPCは、各国より提出されたローカル基準の内容を審査して、国際基準であるGIPSとの互換性を充足していると判断された場合、当該ローカル基準を認証(endorsement)します。
認証の方法
 IPCによる認証には、2通りの方法が採用されています。1つはTG(Translation of GIPS)方式で、これは英文で記述されたGIPSを当該国の言語に翻訳したものを、その国のローカル基準としてそのまま採用する方法です。GIPS制定時にまだ独自の投資パフォーマンス基準を持っていなかった国を中心にこの方式が採用されており、2002年6月末現在で、オーストリア、デンマーク、ノルウェー、ハンガリーがこの方式による認証を受けています。
 もう一つの方法は、CVG(Country Version of GIPS)方式といい、GIPSの内容をコア基準として内包しつつも、各国の実情に応じた条項の付加を認めるものです。この方式は、既に何らかのパフォーマンス報告基準が存在している国を中心に採用されており、2002年6月末現在で、今回認証された日本に加えて、米国、英国、カナダ、アイルランド、オーストラリア、イタリアがこの方式による認証を受けています。
わが国における対応
 わが国でも、既にSAAJ-IPSへの準拠が開始されていることから、基準設定主体である日本証券アナリスト協会がCVG方式への採用方針を決定し、IPCの認証を得るための基準改訂作業を昨年より開始しました。そして、今春には改訂案がまとまり、IPCへの認証申請を経て、2002年6月に行われたIPC会議において正式に認証されたものです(2)。認証の結果、SAAJ-IPSは、今後、「日本版GIPS」という位置付けを与えられることになります。
認証の影響
 IPCによる国際認証が得られると何が変わるのでしょうか。IPC認証を睨んだ今回のSAAJ-IPSの改訂は、基本的にCVG方式への形式的な変換であるため、実質的には1999年に策定された当初のSAAJ-IPSからの変更点はありません。したがって、従来、SAAJ-IPSに準拠していた運用会社は、引き続き改訂後のCVGたるSAAJ-IPSへの準拠が行えることになります。
 一方、CVGとして認証されることに伴い、基準のコアとなるGIPSの解釈や適用等については、今後、すべてIPCによる解釈がそのままSAAJ-IPSに適用されることになります。IPCでは、GIPSの運営に関して実務上考慮すべき、さまざまな問題に関する解釈を専門の小委員会で審議し、その結果をガイダンス・ステートメントという解釈指針として公表するとともに、事務局に寄せられたさまざまな質問への回答をQ&Aという形で公開しています。
 また、不動産やデリバティブ、報酬の取扱い等、現在のGIPSで規定されていない事項についても、将来、これらの事項がGIPSに取り入れられた際には、CVGであるSAAJ-IPSは必ずGIPSの改訂に対応して、基準の改訂を行うことが求められます。したがって、認証による影響は、認証時点である現在よりはむしろ、将来の方が大きくなる可能性があるのではないかと考えられます。
GIPSの将来−統一的な国際基準へ
 IPCでは、現在、不動産条項や報酬の取扱いに関する議論が行われており、これらの事項をGIPSに盛り込む改訂草案が公開されています。また、デリバティブやベンチャー投資等に関する専門の小委員会も活動していることから、今後、GIPSの内容もより広範なものになっていくことが予想されます。そして、最終的には、GIPSを投資パフォーマンスの計算・提示に関する統一的な国際基準(いわゆる“Gold Standard”)として確立していく方向にあると見られることから、今後のIPCの活動状況には従来以上に注目していく必要があるといえましょう。
* 日本証券アナリスト協会 投資パフォーマンス基準(SAAJ-IPS)委員会委員、IPC解釈小委員会委員。なお、文中において意見にかかる部分は筆者の個人的見解です。
(1) 投資パフォーマンス基準に関する一般的な解説とSAAJ-IPS策定の経緯については、本レポートの「第11回:投資パフォーマンス基準について」ならびに日本証券アナリスト協会のWEBサイト(http://www.saa.or.jp/professional/touship_k.html)をご参照ください。
(2) IPCによる認証の状況はAIMRのWEBサイト(http://www.aimr.org/standards/pps/gips-translate.html)をご参照ください。



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