| 年金運用に関する調査・研究/クォンツ・レポート | |
総合運用部 クォンツグループ 西岡 平太 | |
第20回:スタイル・インデックス |
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1.投資スタイルとは? | ||
| (1) スタイル概念の発生 投資スタイルという概念は、1970年代の米国で年金基金から運用パフォーマンス評価の依頼を受けた年金コンサルティング会社が、各運用機関のパフォーマンス特性をいくつかのカテゴリーに分類できる特性を見出したことがきっかけだと言われています。 | ||
| 現在、米国では企業規模の大小と企業価値の割安/割高という2つの軸を利用したラージ / スモール、バリュー / グロース型の投資スタイルが一般に普及しています。 | ||
| (2) Sharpe と Fama-Frenchの貢献 アセット・プライシングにおける実証分析の分野では、Roll[1977] のCAPM批判以降、種々のアノマリーが指摘されるようになり、1980年代にはそれらをファクターとして含めたマルチ・ファクター型のアセット・プライシング・モデルが数多く提案されるようになりました。BARRAなどに代表されるマルチ・ファクター型のリスク・モデルも、こうした経緯から生み出されたものだといえます。 | ||
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その後、そうしたファクター探しに一つの解釈を与えたのがFama and French[1993]の研究です。ここでは、マーケット・ポートフォリオ、SMB(企業規模(SIZE)ファクター)、HML(純資産株価倍率(BP)ファクター)の3ファクター・モデルによる分析の結果として、 @ 相対的にBP(自己資本/時価総額)の高い株式は高いリターンを与える A EP(税引利益/時価総額)やレバレッジといったファクターは単独では有意なファクターだが、SIZEやBPと組み合わせる場合には効果が消失してしまう という論拠を示しました。その後の1990年代以降では、アセット・プライシング・モデルとしてはこの3ファクター・モデルが主流となっています。また、近年ではCarhart[1997]などで、さらにモメンタムも含めた4ファクター・モデルなども提案がされてきています。 | ||
| 一方、Sharpe[1992]では、実際のファンドの時系列リターンのデータを利用することによって、こうしたスタイル特性を特定する分析手法を提案しています。この手法は実際にアセット・アロケーションやスタイル特性の分析手段として、実務上でも利用されています。 | ||
| 上記のような実証研究もあいまって、投資家の運用方針はラージ / スモール、バリュー / グロースという2つの軸に集約・普及していくことになってきています(1)。 | ||
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(3) 日本市場におけるスタイルの現状 日本でも、1990年代半ば頃から、運用パフォーマンスを説明する概念としてスタイルが導入され始めました。現在では、ラッセル/野村、大和(DSI-1、DSI-2)(2)、日興バーラ、日経など、各社がそれぞれ独自のスタイル・インデックスを提供しています。そして、近年では運用データの開示や運用評価サービスが格段に向上したことによって、スタイルを意識した運営が徐々に浸透してきているという報告がなされています(3)。 | ||
| そこで、今回のレポートではラッセル/野村、大和(DSI-1、DSI-2)、日興バーラ、日経の各社が提供しているスタイル・インデックスについて、組成方法、スタイル特性、リターン特性に関して比較分析を行って、それぞれのスタイル・インデックスの特徴を見てみることにします。 | ||
2. スタイル・インデックスの組成|
まず、それぞれのスタイル・インデックスの組成方法などについて見ていくことにしましょう。
(図表1)は、各スタイル・インデックスに関する基本情報と、バリュー/グロース・インデックスの組成方法を簡記しました。(図表1)における各社の主な特徴としては、ラッセル/野村のスタイル基準は修正PBRという単一指標によってバリュー/グロースを分類しているのに対して、日経、日興バーラ、大和(DSI-1、DSI-2)ではそれぞれ複数の指標を用いた分類が行われています。 | | |
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| (図表2)は、各社のバリュー/グロース・インデックスの重複銘柄数を示しています。日経スタイル・インデックスでは重複銘柄の生じない組成方法となっているために0となっていること、バリュー/グロース・インデックスの組成銘柄数が多くなるに従ってバリュー/グロース間における銘柄の重複度合が大きくなっていることがわかります。 | |
| また、(図表3)はリバランス時点でのそれぞれのスタイル・インデックスの回転率(4)を表しています。回転率に関しては、構成銘柄のルール変更の影響や年により数値変動があるために、個々のスタイル・インデックスの一時点での水準を単純に比較すること自体はあまり有益ではありませんが、各スタイル・インデックスの回転率には大きな相違があることがわかります。 | |
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| このような特徴を持つ各スタイル・インデックスをベンチマークとしたインデックス運用を考えた場合には、高い回転率により発生する売買コストや、銘柄入れ替えに伴うリバランス時に発生する価格形成の歪みなど、不可避ではあるものの無視できない影響が想定されます。 |
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3.各スタイル・インデックスのファンダメンタル特性 | |
| 次に各社から提供されているスタイル・インデックスの特徴について見てみることにしましょう。(図表4)は2002年3月末時点における各スタイル・インデックスを企業規模(SIZE)および、株価純資産倍率(PBR)によって分類したものです。各スタイル・インデックスのSIZE、およびPBRはスタイル・インデックスを構成する全銘柄の時価総額加重平均により算出しています。 | |
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| 全体的な傾向としては、バリュー・インデックスは相対的にPBRが低く、SIZEの小さいところに位置しており、グロース・インデックスはPBRが高く、SIZEの大きな部分に位置しています。個々には若干の違いはあるものの、大まかな特性としては概ね類似していることがわかります。従って、この時点ではバリュー銘柄には小型が多く、グロース銘柄には大型が多いという傾向があったことがわかります。 | |
| DSI-1、DSI-2については他のスタイル・インデックスと比較してグロース/バリューの間にSIZEの格差がみられませんが、これはDSI-1、DSI-2それぞれのバリュー/グロース・インデックスの構成銘柄は約2,200銘柄程度((図表1)“銘柄数”に掲載)で、他のスタイル・インデックスと比較して構成銘柄が非常に多く全上場時価総額の大部分が含まれることになっているため、SIZEの格差が表われにくくなっていると考えられます。一方各社のスタイル・インデックス共に、SIZE別のバリュー/グロース・インデックスも作成されており、SIZE別に見ればこうしたバリュー/グロース間の格差は縮小する傾向にあります。 | |
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4.各インデックスにおけるスタイル間の相関 | |
| 次に、バリュー/グロース間におけるリターンの相関はどのようになっているか見てみることにしましょう。(図表5)は、バリュー・インデックスとグロース・インデックスのTOPIXに対するアクティブ・リターンをそれぞれ算出して、そのアクティブ・リターン間の60ヶ月間の相関を求めたものです。この図によると、特に1997年から足元で、全体としてバリューとグロースの逆相関の傾向がより強まっていることがわかります。またラッセル/野村スタイル・インデックスの相関が94年から97年にかけて他社に対して相対的に高く、その後急速に逆相関の傾向が強くなっていますが、このことについて少し詳しく見てみることにします。(図表6)に見られるように89年から94年にかけてDSI-1におけるバリュー/グロースのリターン格差の累積は上昇、つまりバリュー優位となっているのに対し、ラッセル/野村スタイル・インデックスはほぼ横ばいとなっています。94〜97年のラッセル/野村スタイル・インデックスにおけるバリュー/グロース間の相関が0近辺となっているのはこのためであると考えられます。さらに94年以降ラッセル/野村スタイル・インデックスのバリュー/グロースのリターン格差はDSI-1と同様にバリュー優位もしくはグロース優位のトレンドを持って推移しており、この結果97年以降逆相関が強くなっています。 | |
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5.最後に | |
| いままでの分析を通して、各社のスタイル・インデックスのバリュー/グロース・スタイルの特徴と相違を見てきました。「4. 各インデックスにおけるスタイル間の相関」でも確認できるように、現実にも、昨今のスタイル間のリスク/リターン特性が明確に異なってきています。そこで、最近ではリスク管理の意味合いからも、株式ポートフォリオのベンチマークにスタイル・インデックスを採用し始める年金基金も増えつつあり、今後も年金資産管理におけるスタイル・インデックスの重要性は高まっていくと考えられます。 | |
| 重要性が増すということは同時に、各インデックスの組成方法、リスク特性、ファンダメンタル特性、そしてリスク/リターン特性についての充分な理解が必要になってくることを意味しています。そうしたことからも、次回は、株式運用でのベンチマークとしてのスタイル・インデックスの適性、あるいはスタイル・インデックスの運用機関に対する評価指標としての適性や現実の利用に際しての問題点など、より実際の運営に即した分析結果について、ご報告をさせていただく予定にしています。 | |
| (1) 実務上は、PBR(株価純資産倍率)を用いたバリュー / グロースのスタイル区分の方法に対して、引き続き多くの議論がなされています。そこでは、割高 / 割安の基準をPBRという指標で評価することはファンドマネージャーの実際の投資行動とは異なっているといった議論や、割高な銘柄は非バリューではあるものの必ずしもグロース銘柄ではなく、グロース銘柄は利益成長率の指標によって選別する必要がある、といった議論などがあります。 |
| (2) DSI-1は浮動株を考慮したインデックスであり、DSI-2は浮動株を考慮しないインデックス。 |
| (3) 詳細については福嶋[2002]および小林[1995]を参照。 |
| (4) 回転率は、各スタイル・インデックスのリバランス時点(ラッセル/野村:2002年2月、日興バーラ:2002年6月、DSI-1、2:2002年6月、日経:2002年8月)での株価を用いて算出。数値は「片側」の回転率を表している。 |
| [参考文献] |
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