| 年金運用に関する調査・研究/クォンツ・レポート | |
総合運用部 クォンツグループ 岡田賢悟 | |
第22回:外国株式によるエンハンスト・インデックス運用 |
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1.エンハンスト・インデックス運用とは? | |
| 一般には通常のパッシブ運用よりもわずかにリスクを高めて超過収益を狙う運用を指すことが多いようです。リスク水準を低く抑えるため、期待される超過収益は大きくありませんが、リスク管理により重点をおくことで、リスクに対してより効率的なリターン(高インフォメーションレシオ)が期待されることが特徴です。 | |
| わが国では昨今広まりつつある運用手法ですが、米国ではすでに10年以上の実績があり、従来のパッシブ運用と同様にポートフォリオのコア(中核)に位置付ける運用であると言われています。 | |
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2.なぜリスクに対して効率的なパフォーマンスが期待できるのか? | |
| 株価の動きは個別銘柄特有の要因によるものの他、いわゆるベータや業種、バリュー・グロースといった投資スタイルなどによって変動する部分が大きいことが知られています。したがって個別銘柄リサーチによる安定的なリターンを得るためには、ポートフォリオを構築する上でこうしたその他のリスク要因に偏りが起こらないようにすることが欠かせません。 | |
| 例えば、ITバブルの創造と崩壊の過程でIT産業は急騰し、急落しました。全体的な銘柄選択に成功していてもIT産業へのウェイトに偏りがあった場合、銘柄選択の能力はIT産業の激しい値動きの影に隠れてしまったでしょう。したがって、リスク要因を万全に管理するためには、どこから超過リターンを得るのかを明確にする必要があります。 | |
| 「平均的には」高い運用スキルがあったとしても、少数の銘柄に集中して投資を行う場合、安定的なパフォーマンスを得ることは難しくなります。パフォーマンスの安定化には多数の銘柄に分散投資を行うことが重要です。 | |
| サイコロの賭けを例に考えてみましょう。 ■ パターンA:サイコロを一回振って出た目×1,000円をもらえる ■ パターンB:サイコロを1000回振って出た目の合計をもらえる | |
| どちらも平均的には3,500円(期待値)をもらえることになりますが、結果がより安定的なものとなるのはどちらでしょうか? この賭けについて1000回シミュレーションした結果が下の図1です。不確実な物事は、試行回数を多くすることでバラつきを互いに相殺する結果、より平均に近い結果が安定的に得られることが知られています。したがって、安定的なパフォーマンスの獲得には数多くの銘柄に偏りなく投資することが重要となるのです。 | |
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3.ポートフォリオとしてのエンハンスト・インデックス運用のポイント | |
| 上述の理念をポートフォリオとして実現する際に大きく障害となるのが、ショートサイドバイアスと呼ばれる空売り禁止の制約によるポートフォリオの歪みです。一般的な年金運用においては多くの場合個別銘柄のショート(空売り)を認めていませんが、このことは偏りの無い投資活動を行う上で大きな制約となり得ます。 | |
| 図2において、強気に見ているA、B銘柄、弱気に見ているE、F銘柄に対して均等にアクティブウェイトをとることを想定してみましょう。目標にしているTEを実現するにはそれぞれ50bpずつアクティブポジションを取る必要があるとすると、強気のA,B銘柄にはなんら問題はありませんが、弱気のE,F銘柄についてはどうでしょうか? | |
| F銘柄のインデックスウェイトは20bpしかなく、30bpアクティブウェイトをとりきれないことになります。この分をE銘柄で80bpアクティブウェイトをとることでカバーすることはできますが、それによってE銘柄の値動きの影響を強く受ける偏ったポートフォリオとなってしまうわけです。 | |
| 偏りをなくすための対処方法としては、@個別銘柄のショートを認めてしまう、A目標TE水準を引き下げる、などが直接的には考えられますが、いずれも現実的な解ではないケースが多いものと思われます。そこで次善の策としては個別銘柄の連動性を用いて、より類似した銘柄でポジションを代替するという発想があります。 | |
| このようにリスク要因の管理や偏りの無い投資という考え方を実際のポートフォリオ構築に反映する段階でも、いくつかの問題をクリアする必要が出てくるのです。 | |
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4.外国株式におけるエンハンスト・インデックス | |
| 対象資産が外国株式になっても、エンハンスト・インデックス運用の基本的なコンセプトは変化しません。やはり @リスク要因の万全な管理、A多数の銘柄への偏りのない投資行動が要求されることとなります。 | |
| 但し、投資ユニバースを外国株式という複数の国にまたがるグローバルなものとするため、管理すべきリスク要因はもう一段深い考察が必要になります。 | |
| 「業種」、「規模」、「スタイル」などのリスク要因のほかに、「国」というリスク要因を追加する必要があることは自明ですが、さらに多国籍企業の存在や経済そのもののグローバル化というものを考慮する必要があります。 | |
| 昨今のITバブルは日本だけでなく、世界各国共通してIT業界の株式が上昇しました。また石油業界はアメリカでもイギリスでも原油価格という共通の要因に業績が大きな影響を受けます。 | |
| つまり業種を国別に考えるべきか、グローバルに捉えるかという問題がありますし、そもそもEUの誕生により業種に関わらずヨーロッパの企業について国の要因を考慮する必要は無くなってしまっているかもしれません。 | |
| したがって、考慮すべき要因は「国」・「業種」・「スタイル」などと予想されますが、実際にどのような管理を行うべきかという点については、実態経済に対する考察や統計・計量的な分析等を用いて決定する必要があると考えられます。 | |
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5.外国株式エンハンスト・インデックス運用のモデルポートフォリオ | |
| 上述の考え方に基づき、弊社にて外国株式マーケットを「国」、「業種」、「スタイル」等を複合的に考慮した独自のカテゴリに細分化して、リスク管理を行ったモデルポートフォリオのシミュレーションを実験的に行ったところ結果は図3のようになりました。 | |
| 98年のアジア危機の時期にややパフォーマンスを落としているものの、スタイルや地域といった影響を受けず安定的なパフォーマンスが達成されており、こうした考え方に基づく外国株式におけるエンハンスト・インデックス運用の有効性が示されたものといえるでしょう。もっともさらに深く考慮すべき点や、アジア危機時のパフォーマンスの悪化などの問題点などをクリアすべく今後もさらなる検討が必要と考えます。 | |
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