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[経済の動き]
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豪州プロパティトラストの現状とJ-REITへの示唆 |
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[要 旨] 2000年11月末に解禁された日本の不動産投資信託(J−REIT)は、ファンドの資金を外部の運用会社がアドバイザーとして運用する点で、豪州のプロパティトラストに類似している。本稿では、特に上場プロパティトラスト(Listed Property Trust:以下LPT)に焦点をあてる。 |
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1.LPTの特徴 1)市場規模 豪州のプロパティトラストは、上場型のLPTと非上場トラストに区分される。現在ではLPTが中心的存在で、その市場時価総額は約300億豪ドルである。LPTはオーストラリア株式市場時価総額の約5.5%を占めるセクターである(US−REITや日本の上場不動産会社株より高い)。 2)投資商品としての特性 LPTは基本的に優良不動産に投資している。またLPTのギアリング(負債比率)は平均26%程度と低い。投資家にとっては債券に次いで安定的な投資商品となっている。 プロパティトラストは純収益をすべて投資家に分配することで、トラスト段階では課税されない。投資家が受け取る分配金には・Tax Free(減価償却相当額)、・Tax Deferred(課税の繰延べ対象/証券売却時まで)といった部分があり税メリットが与えられている。 3)組成者・投資家 トラスト組成者は、不動産会社、ショッピングセンター(SC)デベロッパー、銀行・生保などである。年金資金などの機関投資家(投資家の70%)はLPTを中期投資(3〜5年)対象とみており収益性とともに成長性を求めている。個人投資家は利回り重視で長期投資が基本である。 4)不動産ポートフォリオ LPTは分散型(Diversified)とセクター特化型に分けられる。分散型は、オフィス、SC、産業用施設、ホテル、駐車場等の不動産に分散して投資している(LPTの約35%のシェア)。セクター特化型には、SCデベロッパーやホテル事業者が当該ビジネスのノウハウを最大限発揮して得意分野をLPT化しているものも多い。 |
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2.外部運用と投資家保護 1)REによる外部運用 プロパティトラストの外部運用責任主体は、1998年7月に会社法の一部を改正するかたちで施行されたManaged Investments Act(MIA法)によりResponsible Entity(RE)と呼ばれる公開会社に一元化された。REの多くはオリジネーターである不動産会社、銀行や生保の100%子会社である。 2)投資家保護の厳格なルール REによる責任の明確化に加え、REに対するコーポレートガバナンス、徹底した情報開示、重要事項に対する投資家の議決権留保(51%以上の賛成でRE解雇も可能)など厳格な法制度上の対応がなされている。 |
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3.LPTに対する市場の評価 1)ポートフォリオ評価 LPTの質を評価する際には、ポートフォリオ中の個別不動産に対する不動産鑑定評価が重要な意味を持っている。物件取得時には目論見書に明記され、運用中の物件に関しても最低3年ごとに外部の評価者によってRevaluationが行われ開示される(鑑定に影響を与えるような変化があった不動産はその都度評価されなければいけない)。この不動産評価額が公表NTA(Net Tangible Asset:純資産)に反映され、市場時価を評価する要素の一つとなる。 2)流動性とLPTの規模 LPT証券(ユニット)の流動性は高く(ユニット総数の約40%の取引高)、機関投資家がLPTに投資する重要な評価ポイントとなっている。 流動性の高さを維持するためにも、規模拡大は重要な事項と認識されてきた。1999年にはLPT間のM&Aも活発化し上場銘柄数の大幅な減少を招いた。大規模なLPTの市場時価にはNTAに対してプレミアムが付く一方、質の良い不動産を持っていても、規模が小さいためにディスカウントされているLPTもあるくらいである。現在M&Aは沈静化し、市場の評価は収益性と成長性に再度フォーカスされると思われる。 |
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4.利益相反の問題への対応 1)REのマネジメントフィー 現在REの多くはトラストのグロスアセット額の一定率(概ね0.5%前後)を年間フィーとしている。この場合、運用不動産の収益成長に対する向上努力あるいは機動的な売却に対して、マネジャーにインセンティブが働きづらい点が問題として指摘される。ただ収益性の良くない不動産の保有はRevaluation評価額を下げ、結果として新規不動産の取得も困難になる。さらに投資家がREの解雇権を持っている点も、資産総額ベースのフィーを容認してきた背景と推測される。 しかし最近では投資家によりフィーの値下げ圧力が強まっている。運用成績の良くないLPTはM&Aの対象として狙われる危険性も高く、フィーの削減努力やインセンティブフィーを採用するLPTもみられる 。 2)親会社との取引 LPTがトラストのオリジネーターから物件を取得する場合、その価格の正当性が問題となる。これに対してREは、第3者による不動産鑑定評価、監査法人による報告書も開示し、適正価格での取得であることを投資家に説明している。オーストラリアでは不動産鑑定価格が尊重、信頼されているといえよう。 またREは通常、トラスト不動産に対するプロパティマネジメントなどの業務をアウトソーシングしており、REから親会社へのアウトソースもある。当然、委託先選定やフィーをめぐって利益相反の恐れが生じる。これについてREは第三者評価による正当性・透明性の確保に努めている。しかし現実にはREとデベロッパー系親会社とのグループ総合力によって投資家への利益分配を最大化し投資家に評価されているLPTもある(Westfield Trustはその良い例)。当然であるが、収益性と成長性を投資家にうまく分配していないREが利益相反を問われるのである。 3)複数のファンド運用 LPTでは通常、単一のREが複数のトラストを運用している。このことから特定の不動産をREが取得しようとする場合、どのトラストに組み入れるかは投資家にとって重要な問題となる。これに対してREは、既存トラストの投資家利益を重視するとともに、・各トラストの運用戦略、・Code of Conduct(RE内部行動規範)、・各トラスト(マネジャー)でシェア、といった複数の段階において、意思決定に対するアカウンタビリティを明確にしている。 |
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5.LPTの変化−Stapled Structure Stapled Structureは既にStock Land, Mirvac, Centro PropertyなどのLPTが採用、最近Westpacが移行採用するなど注目されている。 Stapled Structureでは、トラスト証券とREの親会社である上場会社の株式が一対で取引される。結果、投資家はトラストからの分配金に加え、上場親会社の他の事業収益からの配当をも享受することができる(1)。 Stapled Structureの採用によると、トラストの運用は実質的に内部運用となり、親会社へのアウトソーシングなどに伴う利益相反の問題は消滅する。依然としてREは存在するが、これは法的な存在でありトラストの運用は実際には親会社のマネジャーが行う。同時にREのマネジメントフィーは、資産運用スキーム全体において内部経費化され、フィーの多寡の問題は投資家にとって意味をなさなくなる。US−REITに類似するストラクチャーである。 同規模、同質であれば現在中心であるREによる外部運用よりもStapled Structureが優れているとする評価がある(2)。 |
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(1)豪州の税制では、ビジネス収益には通常の法人税が賦課される。トラスト収入は賃貸・金利・配当収入が基本。SCやホテル運営事業、開発事業などによる事業収入は含まれない。Stapled Structureではトラスト資産の不動産関連経費をできるだけ会社に集約することで節税している。 (2)ただREによる外部運用には透明性があり市場による監視も容易である点、さらに投資家による解雇も可能な点は依然評価されている。 |
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おわりに REITやLPTのような不動産運用スキームのかたちは背景にある税制あってのものである。内部運用LPTもいまだ流動的で主流ではない. しかし、いずれにせよ重要なのは投資家ニーズに合った商品づくりである。投資家の納得を得られるストラクチャー組成、十分な情報開示と投資家への説明が重要である。オリジネーター本位の不動産運用スキームは長続きしない。 (住信基礎研究所 河合延昭 kawai@stbri.co.jp) |