調査レポート

[産業界の動き]

[廃棄物処理]発展期を迎えた静脈産業

1.変貌する静脈産業

(1)拡大するエコビジネス市場

 「家電リサイクル法」 が2001年4月から本格施行された。昨年4月に完全施行された「容器リサイクル法」をはじめ、今後相次いで施行される「食品リサイクル法」、「建設リサイクル法」、「グリーン購入法」などにより、環境配慮型商品の開発、廃棄物処理・リサイクル事業、土壌・水質浄化事業などエコビジネスの市場規模は飛躍的な拡大が見込まれる(表1)。
 廃棄物処理、リサイクルといった所謂静脈産業は、これまで中小企業が中心であったが、新たなビジネスチャンスを狙って、セメント、鉄鋼、非鉄など大手メーカーやベンチャー企業などが続々と参入しており、21世紀の成長産業として確立する基盤が整備されてきた。
 市場規模拡大の一方で、リサイクルの推進、工場のゼロエミッション化は廃棄物の処理量を減らすことにつながるため、運搬、焼却、埋立という形態の既存の廃棄物処理業務は従来以上に競争が激化する可能性が高い。この中で廃棄物処理業者は、これまで積み上げてきたリサイクルが困難な廃棄物の再資源化のノウハウ、工場などのリサイクルシステム構築のノウハウの提供や、インターネットを活用したリサイクルの輪を形成するための顧客ネットワーク構築などに注力し、他社との差別化を図っている。

表1


(2)循環型経済に向けた法制の整備

 日本では、これまで「廃棄物処理法」「再生資源利用促進法」「容器包装リサイクル法」「家電リサイクル法」などが別個に制定されていた。
 2000年に基本的な枠組みを定めた「循環型社会形成推進基本法」が制定され、従来再利用(Recycle)のみを促進するものであった「再生資源利用促進法」が、Reduce(発生抑制) 、Reuse(再使用)、Recycle(再資源化)の3Rを総合的に促進する「資源有効利用促進法」に改正され、「廃棄物処理法」の規制も強化された(図1)。

図1

2.リサイクル法と各業界の動向

(1)家電リサイクル法

・懸念される不法投棄
 使用済み家電品のリサイクル法制化はドイツなど欧州諸国でも進められているが、排出時に消費者がリサイクル料金を支払う方式を採用するのは日本が初めてである。排出時に消費者から徴収されるリサイクル料金は、洗濯機2,400円、テレビ2,700円、エアコン3,500円、冷蔵庫4,600円で電機メーカー各社横並びとなった。消費者はこれに加えて指定引取場所までの運搬費用(1台あたり1,000円〜3,000円程度)を小売店などに支払うことになるため、使用済み家電品処理にかかる負担が急増する。リサイクルコストを消費者に求めた点で循環経済社会構築に向けた重要な一歩となる画期的な制度であるともいえるが、一方で、マニフェスト制度の導入や罰則の強化、自治体による監視強化などの対策が講じられるにもかかわらず、不法投棄が増加するという懸念は払拭できない。

・関連業界の動向
<家電メーカー>
 大手家電メーカーは日立製作所、三菱電機、三洋電機、シャープ、ソニーの5社を中心とするグループが全国に新たにリサイクルプラントを設置、共同出資により設立された新会社が運営するのに対し、松下電器産業と東芝の2社は廃棄物処理業者とのネットワークを構築し、既存のインフラを活用する方針である。
 使用済み家電品の約70%は関東、近畿、中部の3地区で排出されているため、特に排出量の少ない地域に立地するリサイクルプラントにとっては、稼働率の引上げが大きな課題となる。同法施行前に使用済み家電品が駆け込み的に自治体に持ち込まれたことから当面使用済み家電品の排出は低調に推移するとみられ、その後は中古品としてリサイクルショップへの持込まれたり、海外へ輸出されるケースが増える可能性があり、先行きは不透明である。

<小売店>
 小売店は使用済み家電品を引取り、メーカーが設置する指定引取所まで運搬する義務を負う。運搬費用は消費者から徴収するが、自社の物流網を活用して運搬費用を低く抑えることのできる企業とそうでない企業の格差が拡大する可能性がある。
 家電品の修理ニーズが高まる可能性も考えられるため、顧客の囲い込み策として修理サービス業務を強化する企業が増えている。また、中古品として引取った使用済み家電品を販売する専門店舗の出店を計画する企業もある。  


(2)容器包装リサイクル法

 容器包装リサイクル法は缶、瓶、飲料用紙パック、プラスチック容器、包装紙などの廃棄物を、消費者が分別排出し、市町村が分別収集し、食品メーカーや小売業者が再商品化するというものである(図2)。
 同法は2000年4月から完全施行され、紙容器、プラスチック容器などすべての包装廃棄物が適用対象に加わった。また、再商品化の義務を負う対象事業者の範囲も拡大され 、対象事業者数は約520社から約16万社に急増している。
 再商品化事業には、廃プラスチックを原燃料として再利用する高炉業界やセメント業界も参入している。現状PETボトルのリサイクルは順調に伸びているが、その他の廃プラスチックについては引取量が計画の4割程度にとどまり処理プラントの稼働率が低迷しており、廃プラスチックの分別収集が不徹底で異物混入率が高いことも影響して採算が悪化しているなど、改善すべき点は多い。

図2


(3)食品リサイクル法

・法制化の背景
 食品の売れ残りや食べのこし、製造過程で発生している動植物性残さなどの食品廃棄物は一般廃棄物として年間1,600万トン(重量比で一般廃棄物全体の33%)、産業廃棄物として340万トン(重量比で産業廃棄物全体の1%)程度排出されていると推計される。このうち食品工場などから排出される産業廃棄物に分類される食品廃棄物については約5割が飼料や肥料としてリサイクルされている一方、一般廃棄物に分類される食品廃棄物のリサイクル量は年間約5万トンと排出量の0.3%に過ぎず、大部分が焼却や埋立などの方法で処理されている。
 食品リサイクル法は流通、外食企業、ホテル、食品加工会社などの食品関連事業者に対し、廃棄物の発生の抑制と飼料や肥料としての再利用を促し、5年間で20%の排出量削減を義務づけている。

・これまでの問題点
 従来から、ホテルや外食チェーン、コンビニエンスストアなどで生ごみの堆肥化、飼料化などの取り組みは行われてきた。しかし、売れ残り弁当や残飯など塩分を含む原料から作られた堆肥は、大量に使用すると土壌に蓄積されて塩害の原因となる懸念があり、製造された堆肥原料の受入先が十分に確保できていないケースも多い。
 また、廃棄物処理業者も、臭気発生などの問題から堆肥化施設を都市部には建設しにくいこと、レストランチェーンなど、少量の生ゴミが分散して発生する業界では、発生する生ゴミを市町村を越えて運搬する場合、域外からの廃棄物の搬入を禁じる市町村が多いなど、広域的な処理を行うにはいくつかの障害があった。

・食品リサイクルビジネスの可能性
 食品リサイクル法では、収集運搬の許可に関する規制を緩和する特例が設けられ、広域的なリサイクル事業展開が容易になった。
 また、2001年3月には全国堆肥センター協議会が設立され、全国に3,000カ所以上存在する堆肥センターの機能の強化を図るなど、堆肥原料の受入側の態勢も整いつつある。
 近年松下電器産業や三洋電機など大手電機メーカーが生ごみ処理機の顧客と堆肥製造会社や農業法人とのネットワークを構築するサービスを展開する事例や、外食チェーンやホテルなどが食品リサイクル会社を設立する事例がでてきており、さらに、インターネットを利用して堆肥の仲介を行うベンチャー企業も登場するなど、今後食品リサイクルが事業として確立する可能性が高まってきた(表2)。
 

表2


(4)建設リサイクル法

 建設廃棄物は産業廃棄物全体の排出量の約2割、最終処分量の約4割を占める。昭和40年代に急増した建築物が更新期を迎え今後発生量が急増する見込みであることから、そのリサイクル率向上が喫緊の課題となっている。建設資材廃棄物の中では、特に建設混合廃棄物(ガラス、金属、木屑など)は排出量が多い上にリサイクル率が低い(表3)。
 建設リサイクル法は建設工事で発生したコンクリート、木材、アスファルトの分別解体と再資源化を義務づけるもので、2001年に施行され、2002年から再商品化が義務化される。元請業者を中心とする受注者には分別解体や再資源化が義務づけられ、発注者側も事前の工事計画提出が求められ、分別解体によるコスト増など負担が増加する。
 建設業界ではリサイクル法施行を前に、建設現場のゼロエミッション化、環境に配慮した資材の優先利用などを進めている。

表3


(5)自動車リサイクル法

 国内で発生する使用済み自動車は年間約500万台にのぼる。このうち重量比で75%は解体業者により再生部品として再販(リユース)ないしはスクラップとしてリサイクルされているが、残り25%はシュレッダーダスト*1として埋立処理されている。近年スクラップ価格が低下したこと、シュレッダーダストの埋立処理コストが増加したことなどから、不法投棄が目立つようになった。このため経済産業省は2002年の法案提出、2004年施行を目指して「自動車リサイクル法(仮称)」の法制化の準備を進めている。同法によって、自動車メーカーには廃自動車の回収、部品の再利用などが義務づけられ、ユーザーは1〜2万円のリサイクルコストを負担することになる可能性が高い。
 自動車業界では既にリサイクルしやすい素材、構造での設計を進めシュレッダーダストの発生量削減などを進めている。また、シュレッダーダストのリサイクルに廃棄物処理業者と自動車メーカーが提携して取組んでいるケースもある。
 その他自動車リサイクルに関連して、中古部品のマーケットが整備され欧州並みの2,000億円規模の市場になるとの見方もあり、新たなビジネスチャンスの拡大も期待できる。

*1 シュレッダーダスト:エンジン、タイヤ、電装部品など再使用可能な部品を取外した後、車体を破砕機で処理したものから鉄・非鉄金属を回収した後に残る灰状の廃棄物で、樹脂、繊維、ガラス、ゴム、金属などからなる。

3.環境関連ビジネスの動向

(1)廃棄物処理、リサイクルに積極的に取組む業界

・セメント
 セメント業界では原料、燃料として業界全体で年間約2,700万トンの廃棄物を利用している。エコセメントはセメントの主原料である石灰石と粘土の一部を焼却灰で代用して製造するセメントで、従来塩素が鉄筋を腐食させるため用途が限られると言われてきたが、塩素除去技術の開発が進み、塩素含有量を下げたエコセメントも開発されるなど、用途拡大の可能性が高まりつつある。太平洋セメントと三井物産は共同出資で市原エコセメントを設立、年間6万トンの焼却灰を処理するプラントを01年4月に稼動させる。

・鉄鋼
 NKKは廃プラスチックをコークスの代替原料として使用する技術を生かし、容器包装リサイクルや家電リサイクルに進出している。特に廃プラスチックをコークスの代替原料として高炉に吹込む技術は、CO2発生量を減らす効果もあるため、他の高炉各社も積極的に取組んでいる。

・造船重機
 焼却炉などの廃棄物処理装置の製造、納入に加えて、自治体のゴミ処理施設の運営の受託にも注力している。また、PFIの仕組みを活用した資金調達などを視野に入れ、廃棄物処理事業を強化する動きもある。

・鉱業(非鉄金属)
 同和鉱業や三菱マテリアルなどが、非鉄精錬の技術を活用して廃家電リサイクルなどの廃棄物処理や、土壌回復事業などを手がけている。


(2)土壌浄化事業

 これまで土壌浄化事業は水処理メーカーや鉱業、ゼネコンなどが手がけてきたが、近年ごみ焼却場周辺のダイオキシン汚染が大きな社会問題となったこともあり、にわかに脚光を浴びている。リストラによる工場の閉鎖や売却が増える中で電機・電子機器メーカーの工場跡地での土壌汚染が発覚するなど、不動産取引や土地評価への土壌汚染の影響がクローズアップされていることも、土壌浄化事業拡大の要因となっている。
 土壌浄化の技術としては、バイオレメディエーション(生物的環境浄化)、分離・分解、熱処理、固化など汚染物質によりいくつかの手法がある。技術的には早くから土壌浄化ビジネスが成長した米国が先行し、米国から技術を導入するケースが多い。
 99年から2000年にかけては、環境装置メーカーや総合商社、ベンチャー企業などが相次いで新規参入した。NKKは三菱商事と、三井造船は三井物産とそれぞれ連携して土壌浄化事業に参入している。
 土壌、水質浄化事業のマーケット規模は現状400〜500億円と推定される。環境白書によれば2010年には3,225億円に拡大すると見られており、潜在需要は数兆円ともいわれる。


(3)焼却灰リサイクル事業

 焼却灰は年間約600万トンが排出され、全国で最終処分場に埋立てられる廃棄物全体の約35%(首都圏では48%)に達しており、減量化、再利用が急務となっている。また重金属類やダイオキシンなどの有害物質が含まれており、適切な方法で無害化した上でリサイクルする必要がある。
 各環境装置メーカーでは溶融方式 など様々な焼却灰処理装置を開発して自治体向けに販売を行なっている。また、廃棄物処理業者が焼却炉から出る焼却灰の処理を受託するなどの動きもあり、今後焼却灰関連のビジネスチャンスが広がる可能性も大きい。


(4)廃棄物処理業者の動向

 廃棄物処理法の改正により廃棄物の排出者の責任が強化され、適正な処理の確認など注意義務を怠った場合には排出者が原状回復責任を負うことになる。このためメーカーなど排出者の適正な廃棄物処理、リサイクルを行う廃棄物処理業者に対する情報ニーズが高まっている。
 廃棄物処理業者も、単に排出される廃棄物の処理にとどまらず、新たなリサイクル手法や廃棄物削減、処理コスト削減方法など、廃棄物全般についての提案を積極的に行うことで事業基盤の拡大を図る企業が多くなっている。

・クラスタリング
 クラスタリングは各企業から出される廃棄物の数量や種類を把握して、処理やリサイクルを効率よく行うことを支援するビジネスである。廃棄物処理業者のアミタはインターネット上に「アミタネット」というサイトを開設して廃棄物処理の仲介業務を行っている。さらに同社は廃棄物処理で培ったノウハウと、製品が環境に与える影響を生産から廃棄物に至るまで各段階ごとに総合評価する「ライフサイクルアセスメント」の手法を活用し、顧客企業に対して、具体的な環境関連の設備投資計画の策定や、環境関連技術の導入の提案なども行っている。
 インターネットを利用して廃棄物処理やリサイクルシステムの構築をサポートする事例としては、OA機器リサイクル業者の日新産商が出資する環境ベンチャーのタオが、三井物産と組んでインターネットを利用した使用済みパソコンの回収・リサイクル受託サービスを行っている。また、同社では事務手続きが煩雑なマニフェストの管理業務を代行する事業も展開している。

・ネットワークの構築
 適正な処理を行う廃棄物処理業者の全国規模でのネットワークを構築する動きが広まっている。
 マリソルネットワークは中田屋を中心とした全国の20社の金属回収業者からなる廃棄物処理のネットワークグループである。
 オリックス環境はオリックスグループが100%出資し、顧客に産業廃棄物処理業者を紹介することを主な目的として98年4月に設立された。関東圏で廃棄物の収集運搬業者60社程度と提携し、廃棄物排出企業に対して提携処理業者を紹介している。将来的にはガス化溶融炉などの大規模な中間処理施設を建設し、自前では大規模な施設の保有が困難な産業廃棄物処理業者に貸与するなどの構想も持っている。
 リーテムは全国の廃棄物処理業者、三菱商事、日本通運と共同でOA機器のリサイクル事業を全国展開するほか、98年に28社のリサイクル会社で構成するグループ「日本リサイクル向上委員会(JRIC)」を組織し、廃家電処理の統一基準作成などに取組んでいる。

・廃棄物コンサルティング
 近年大手製造業を中心に工場のゼロエミッション化を進める動きが活発化し、食品、電機、自動車のほか、住宅、化学など様々な業種の工場が埋立て廃棄物ゼロを目指した取り組みを行っている。
 ゼロエミッション化には高度なリサイクルのノウハウが必要である。難処理廃棄物リサイクルの実績をもつダイセキや、廃棄物の分別から収集までを含めたリサイクルシステム構築とコスト削減のノウハウを提供する市川環境エンジニアリングなどの廃棄物処理業者や、総合水処理の栗田工業なども、ゼロエミッション化に向けたコンサルティング業務を強化し業務の拡大を図っている。

(塙 hanawa@sumitomotrust.co.jp)




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