調査レポート

[産業界の動き]造船

厳しい局面を迎える造船業界

1.新造船受注量は首位を維持

 1998年の日本の新造船受注量は331隻、1,067万総トンとなり、999万総トンの韓国を抑えて世界首位の座を維持した。97年の受注が高水準であったため、前年比では18%減となったが、5年連続で1000万総トンを超え、高水準の受注を続けている。
日本の造船所の多くは現時点では適正レベルといわれる2年から2年半分の受注残を抱えており、当面の仕事量は確保されているが、問題は船価の低迷と2002年以降の新造船需要の急激な落ち込みである。

2.低迷を続ける船価

 97年のアジア通貨危機以降韓国では、貴重な外貨獲得手段としての造船業への期待と、近年拡大された設備能力を満たす必要性から積極的な新造船受注姿勢をとってきた。各造船所は、ウォン安によるドルベースでのコスト低減、さらには国内の高金利のもとで、契約時の支払ウェイトが大きいトップヘビーの支払条件とすることで享受できる資金運用メリットを提示価格に反映し、低船価での受注を行なった。このため、98年にはドル建て船価は急激に低下し、VLCC(20万〜30万重量トンのタンカー)は適正船価といわれる9,000万ドルを大きく割り込み、7,000万ドルを切る水準にまで落ち込んでいる。
世界全体の平均的な新造船需要は年間2,250万総トン程度とみられるが、ここ数年間世界の新造船受注は3,000万総トンを超える水準で推移しており、将来の需要を先食いしているといわれる。IMO(国際海事機構)のタンカー構造規制により原則運航ができなくなる船齢25歳以上のシングルハル(一重船殻構造)VLCCは99年から2002年の4年間に188隻あるが、この代替分のうち118隻は既に発注済であり、残りは70隻程度しかないとみられ、VLCC発注の増加による船価回復もあまり期待できず、船価低迷は長期化の様相を呈してきた。

3.厳しさを増す受注環境


 需要の先食いによる船舶需給不均衡への不安、日本をはじめとしたアジアの経済低迷、金融不安による信用収縮の船舶金融への影響などにより、98年秋以降新造船受注は急減した。99年に入って引き合いは回復しつつあるものの、船価は依然として低く、厳しい受注環境が続いている。
VLCCの代替需要がピークを越える2002年以降は2010年頃まで新造船需要が「底」の時期を迎え、特に売上に占める造船比率の高い中手(中堅)造船所にとっては、正念場を迎えることになる。

4.相次ぐVLCC建造ドック建設

 99年初に明らかになった中国の造船所による初めてのVLCC受注は、造船業界で大きなニュースとなった。
さらに中国では、現在建設中ないし計画中のVLCC建造可能なドック7基が2005年以降に稼働する。
韓国でも既に稼働中のVLCC建造可能なドック14基に加えて3基の新設計画があり、日本でも今治造船が大型ドックの建設に着手するなど、新造船需要が減少するなかで建造能力過剰に一層拍車がかかる。

5.転換を迫られる日本造船業界

 日本の造船所では、同船型を5隻程度連続して建造することでコスト競争力を高めてきた。しかし、VLCCを発注する石油メジャーなど船主の間では独自のスペックを求める動きもあり、造船所も、量を確保して生産効率を高める従来の方法から、操業率を落としてでも、採算重視の受注姿勢を堅持する「量から質への転換」が必要となってくる。
日本の造船業界は1960年代の80社から現在の大手7社、中手10社、小手33社ほどの体制に集約されてきた。造船業は地場産業であり雇用の問題が大きいこと、また、コストに占める原材料費の割合が高いため合併がコスト競争力強化に結びつきにくいことなどから、現状業界再編に向けた動きは見られない。しかし、さらに厳しさを増すマーケットで生き残るには、受注、部品調達から設計、製造まで一貫した情報化、自動化を図って合理化を進めるとともに、大手の技術力と中手の低コストの労働力を生かした企業提携なども今後検討する必要があるだろう。

(塙)

図 ドル建て船値の推移



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