調査レポート

[産業界の動き]不動産

首都圏マンション市場の現状と展望

1.99年前半の販売は好調

 首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)の新築分譲マンションの販売戸数は、94年〜96年のマンションブーム期には年間8万戸を超え、それまでの4〜5万戸台を大きく上回ったが、97年以降は消費税率引上げ前の駆け込み需要 の反動や雇用不安を背景として前年を下回り、97年は6万9千戸、98年 は6万5千戸となった。
  しかし98年10月に住宅金融公庫の貸出基準金利が史上最低の2.0%に引 き下げられたことを契機に販売戸数は回復に向かっており、99年1−5月 は前年同期比50%増の3万6千戸となった。

2.販売戸数増減の要因

 回帰分析による推計式により、首都圏の新築マンション販売戸数の前年 比増減を(1)平均分譲価格、(2)公庫金利、(3)サラリーマンの平均年収、(4)雇用 環境の4要因に分解すると、バブル崩壊以降は概ね金利低下と分譲価格低 下がプラスに作用し、年収と雇用環境はプラス・マイナスが前後している (図1)。
  このうち、平均分譲価格は90年の6,123万円をピークに、前回のマンシ ョンブーム期の94〜96年には4,100〜4,400万円となり、98年には4,168 万円となっている。
  一方、首都圏の平均的サラリーマン世帯の年収は90年の669万円から 94〜96年には710万円に増加し、98年は718万円となった。
  マンション購入資金の2割を手持資金で、残り8割を年収の25%を年間 返済額とする25年ローンで調達したと想定して住宅取得可能額を試算す ると、90年が2,803万円であったのに対し、94〜96年には年収アップと 公庫金利低下により3,300〜3,800万円に、98年には公庫金利が更に低下 したことにより4,281万円に上昇した。
  この結果、「平均分譲価格/住宅取得可能額」の倍率は90年の2.18 倍が、94〜96年には1.1〜1.3倍、98年には0.97倍まで低下した。

図 首都圏マンション契約戸数要因分解(前年対比)

3.郊外から都心への回帰

 住宅取得可能額の上昇に加えて、都心と郊外の物件の価格差が縮小した ことにより都心での販売が好調になっている。
  80年からの推移でみると、東京と東京以外(神奈川・埼玉・千葉)の平均 分譲単価の価格差は89年が最大で90年からは縮小に向かっている。一方、 首都圏における東京都内の供給戸数シェアは89年の22%が底で98年には 45%に増加している。
  都心回帰のもう一つの理由としてマンションの購入目的がバブル期にみ られた資産形成目的から永住目的に変化してきたことがあげられる。購入 者は通勤・通学・買い物などの利便性を追求してマンションを選ぶように なり、結果的に都心への回帰に繋がっているとみられる。
  マンション価格はまだ低下するとの予想もあるが、都心のマンションは ニーズが高まっていることから底値に近い水準にあると思われる。今後は 首都圏でも地域により価格の二極化が進む可能性もある。

4.今後の展望

 前掲の推計式で各要因の99年の動向を公庫金利・分譲価格は横ばい、年 収・雇用環境はマイナスと想定し、99年の首都圏新築マンションの販売戸 数を推計したところ年間7万5千戸となった。
  また99年前半のマンション市場には公庫金利の上昇懸念と時限的住宅 税制導入による駆け込み需要が発生していたと思われる。公庫金利は財投 金利に連動することになっているが、政府は景気対策として99年3月に公 庫金利の引上げ幅の圧縮を行なった。住宅税制の適用期間は入居ベースで 99年1月から2000年12月まであり、発売から竣工までの期間を考えると 税制面からの駆け込み需要は2000年6月頃まで続くと思われる。
  推計式による99年1−3月の販売戸数推計値と販売実績を比較すると実 績が推計値を約1千戸上回っている。この1千戸が駆け込み需要でありそ れが1年間続くと仮定すれば、年間では4千戸の駆け込み需要が発生する ことになり、99年推計値7万5千戸とあわせると7万9千戸となる。

(錦織)




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