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[経済の動き]1999・2000年度経済の見通し
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円高の下で持続する景気回復 |
[ 要 旨 ]
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1.景気回復の動きと残存する脆弱さ 景気の底を脱した日本経済には、自律的景気回復につながる動きが徐々に見え始めた。 第1に、大企業に比べて回復が遅れていた中小企業の景況感は、7−9月期には改善傾向がやや強まった。「中小企業景況調査(中小企業金融公庫)」における売上げや利益額に関するDIは7月以降マイナス幅が目立って縮小した。 第2に、在庫調整はかなり進捗し完了に近づいたと見られる。8月の在庫率指数(季節調整値:95年=100)は99.4となり、今回の景気後退局面入り直前に近い水準まで低下した。 第3に、夏以降為替円高が進んだ中でも、99年度下期の企業収益は大幅増益を確保しそうである。「短観」全産業ベースでみると、経常利益は前年同期比27%の増加が見込まれている。 しかしその一方、各種の設備投資計画には積み増しの動きは見られず、設備投資の減少に歯止めが掛かったとはまだ言えない。雇用者所得(常用雇用×現金給与総額)も前年実績割れが続いており、消費性向の持ち直しに主導された個人消費の回復傾向は、徐々に頭打ちとなる可能性が高い。 また、公共工事着工額は6月から前年同月比マイナスとなっており、第2次補正予算の政策効果(5兆円を想定)も2000年度に持ち越されるため、99年度下期には公共投資の景気下支え効果は期待できない。住宅着工戸数も、足元では年率130万戸で頭打ちとなっており、秋口からはピークアウトする可能性が高い。 このように、自律回復色が直ちに強まるほど景気の基盤は強いものではなく、公共・住宅投資の政策効果も剥げ落ちつつあり、外的なショックに対する耐性は十分とは言えない。 こうした中、日本経済の回復期待や米国経済の先行き不透明感の台頭を背景に、1ドル=105円前後まで円高が進行した。この外的ショックに日本経済が耐えられるのかどうかが、景気先行きのリスク要因となってきた。 2.日米ファンダメンタルズから見た円高進行の可能性 では円高は更に進むのかどうか、日米ファンダメンタルズの観点から検討してみよう。 米国経済はFRBの2度にわたる予防的引き締めにもかかわらず、依然としてやや過熱気味の景気拡大が続いている。米国経済のGDPギャップ(潜在GDPと実際のGDPとの差)を試算すると、現在は潜在GDPを2%上回る需要超過状態にある(図1)。それでも消費者・卸売物価が落ち着いていたのは、(1)インフレ期待が高まらなかった、(2)労働コストの増加を生産性上昇の範囲内に抑えられた、(3)輸入物価が下落していた−ためである。 しかし足元では原油価格が前年比60%超の大幅な上昇となっていることから、輸入物価はマイナス幅を急速に縮小させており、物価安定の役割を失いつつある(表1)。 このため、(1)輸入物価の上昇が国内に波及する、(2)インフレ期待が高まる、(3)賃金と製品価格がスパイラル的に上昇する−ことによってインフレが顕在化し、ドルの大幅下落=円高の進行を誘発する可能性も否定できない。 しかし今回の予測では、輸入物価の上昇が国内インフレに転化することはなく、米国経済の「インフレなき景気拡大」という姿、さらには米国経済やドルに対する信認が大きく崩れることもないと見た。 これは、(1)原油価格上昇に伴う輸入物価の上昇は、生産者物価を0.3%ポイント程度押し上げるに止まる、(2)賃金の伸びは徐々に高まっているが、雇用者数の伸びは鈍化しているため、総人件費の増勢は弱く、米国企業が製品価格の引き上げに走る可能性は低い、(3)FRBはあと1回利上げを実施すると見込まれ、企業・家計・市場のインフレ期待は高まらない−ためである。 米国経済は年内は3%成長が続き、99年の実質成長率は3.7%となるが、2000年春頃には2%台半ばにソフトランディングし、インフレ懸念も後退するだろう(2000年は2.7%成長)。 また、ドル安にオーバーシュートする場合には、輸入物価上昇を起点とするインフレ顕在化の可能性がさらに高まるので、米国政策当局はドル安防止策を実施すると考えられる。 一方、日本経済は、99年度下期においては個人消費・公共・住宅投資の関連指標にはもたつきが出てくると見込まれる。このため、円高の一因となった先走り気味の景気回復期待はやや後退し、追加緩和観測がくすぶる局面になると考えられる。 貿易黒字は、円高による輸出価格の下落(99年度)、原油価格上昇による輸入金額の増加(2000年度)などにより、99・2000年度とも縮小するので、円高要因として作用することはない。 こうした日米ファンダメンタルズの状況や政策対応から見て、99年度下期において円高が更に進み1ドル=100円を割込む水準が定着することは避けられると見込まれる。 2000年度は、日本経済の回復・米国経済の減速という組合せは続くため円高圧力は高まりやすいが、米国経済の景気後退や株価の大幅下落は回避されるので、100円台前半〜半ばを中心として推移すると考えられる。 |
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3.軽微に止まる円高の悪影響 99年度下期から2000年度において、円ドルレートが100円台前半〜半ばの水準で推移する場合、輸出や企業収益はどのような影響を受けるだろうか。 今回の円高と今後の世界経済の動向が、向こう1年間の輸出数量に与える影響をチェックすると、(1)円高に伴う価格競争力の低下によって輸出数量は5.4%減少するが、(2)米国経済の堅調やアジア・欧州経済の回復による輸出市場の拡大によって、輸出数量は5.5%押し上げられ、低下分をほぼ相殺する形となる(表2)。 また、日米ファンダメンタルズから円ドルレートの理論値を推計すると100円台前半となり、現在の100円台半ばという水準は輸出数量を大きく損なう水準とは言えない(図2)。 こうしたことから、100円台前半〜半ばの為替水準の下では、輸出数量や企業収益の大幅な落ち込みは回避できると見込まれる。99年度の財・サービス輸出はプラス成長に戻り(+1.2%)、2000年度も3.3%増加し、景気の下支え役を果たすことになる。 |
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4.2000年度まで途絶えない景気回復の動き 99年4−6月期の「法人企業統計季報」によると、大企業では利益率が持ち直したのに続いて、人件費圧力もピークアウトしてきた。こうした収益力の改善を背景に、99年度から2000年度にかけては円高の下でも企業収益の改善が持続し、設備・雇用の過剰感は徐々に緩和するだろう。賃金も99年度下期からは残業手当の増加により徐々に下げ止まってこよう。 こうして99年度下期は、個人消費は、消費性向の上昇が限界に達し伸びは鈍化するものの増勢を維持し、設備投資は企業収益の拡大を背景にマイナス幅が縮小する。公共投資の減少が響き99年度下期の成長率はほぼ前期比ゼロとなるが、景気回復の動きは途絶えない。99年度の実質成長率は+1.1%となる。 2000年度に入ると、賞与削減の動きが一服し、下がり続けた春闘賃上げ率も前年度並みとなり(2.2%)、失業率も頭打ちとなるので、家計所得はようやく上向く。このため個人消費の伸びは徐々に高まる(上期:前期比+0.6%→下期:同+0.9%)。 また、設備投資は上期中には増加に転じ、下期には年率7%の拡大をみる。企業収益の増加を背景に、ゼロ成長を前提とした調整局面から1%成長に見合う増加局面に徐々に移行するためである。 こうして2000年度の日本経済は、個人消費と設備投資が牽引する形となり、実質成長率は+0.9%となる。成長率が99年度(1.1%)より低いのは、(1)成長率のゲタがほぼゼロであること(99年度は0.9%)、(2)公共投資が地方分の減少が響いて▲5.3%となること(99年度は+7.0%)−のためである。民需の伸びは+1.6%まで高まる(99年度は+0.8%)ので、自律的景気回復色が徐々に強まるだろう。 10年国債利回りは、99年度下期中は上昇要因(景気回復の持続、補正予算組成による国債増発)と低下要因(一部の景気指標のもたつき、追加緩和観測)が拮抗し、1.5〜1.9%のレンジで推移するだろう。2000年度には景気回復色が徐々に強まり、ゼロ金利政策も年度半ばに解除されるため、2%を上回ると考えられる。 (金木) |
