調査レポート

[産業界の動き]鉄鋼

世界の鉄鋼業の現状と今後の日本の鉄鋼業

1.世界の鉄鋼業の現状

 98年の世界の粗鋼生産高はアジア経済の混乱などの影響を受け、前年比▲3%の7億7,590万tに止まり、この10年間8億tを目前にして足踏み状態が続いている。一方、世界の粗鋼生産能力の増強は続き、公称ベースで98年は10億4,300万t、OECDの試算では2001年には11億2,300万tに達すると予測されている。過去10年間で日・米・欧の先進工業国は粗鋼生産能力を約3%削減しているが、韓国・中国・ASEANなどの新興工業国は逆に倍増させている。
98年の生産実績と公称ベース生産能力を比較すると世界で約26%の生産設備が過剰となっており、設備はあってもオペレーターがいないなどで実質的には生産できない部分を除いた有効能力ベースでみても20%近くは過剰と推定される。国別の公称能力ベースの需給ギャップでは米国14%・EU19%・韓国25%(但し経済危機以前は10%前後)・中国8%に対し、日本は37%と世界最高水準でしかも拡大傾向にある。

2.鉄鋼事業の再編動向

 市場の成熟化に対応した再編が最も活発なのはEU鉄鋼業である。独占禁止法適用の緩和措置、閉鎖する工場の跡地利用や企業誘致、削減される従業員に対する職業訓練などへの公的支援もあって、国境を越えた合弁・合併・買収が盛んに行われている。その結果EUの主要一貫鉄鋼会社は、Arbed(LUX・粗鋼生産高2,010万t)、Usinor(仏・1,890万t)、British Steel(英・1,630万t)、Thyssenn Krupp(独・1,480万t)、Riva(伊・1,450万t)の5社に集約され、生産高は世界最大の浦項綜合製鉄(韓・2,560万t)や新日本製鐵(2,510万t)に次ぐ規模となり、世界の3〜8位をEU鉄鋼各社が占めるに至っている。
過去30年間高炉5社体制を続けてきた日本の鉄鋼業でも、世界的な鉄鋼業の成熟化と高水準の需給ギャップから、共同出資会社設立などの動きがみられる(下表)。高炉5社が一気に再編されるとの観測が一部にあるが、国内でどの分野の事業統合を考えてもシェアが極めて高くなり、現状では独占禁止法に抵触する恐れがあるため実現は難しく、政府・公正取引委員会の政策方針の変更を待たなければならない。当面はシェアの低い不採算部門の整理、OEM供給による互いの生産設備の共同利用、独占禁止法の政策上関心の薄い輸出共同販社の設立、などの形で事業の再編が進むと思われる。また、EU域内の鉄鋼会社同士の関係強化が進められたように、アジア域内の鉄鋼会社との関係強化もあわせて進められるであろう。

3.主要鉄鋼会社の競争力

 直近2期平均の連結財務データを用い収益性と財務の安全性を比較すると(下図)、最も高い競争力が認められるのは新興工業国にある中国鋼鐵(台)、浦項綜合製鉄、Gerdau(BRA)である。EUのBritish Steel、Usinor、Arbedや米国のUSX、Bethlehem Steel、LTVは、財務の安全性はやや高いが収益性は低い。一方、日本の高炉5社は両指標とも低水準にある。採算よりもシェア重視の経営が続けられたこと、事業の多角化が奏功しなかったこと、過去からの過剰設備が重くのしかかっていること、などが災いしている。

4.日本の鉄鋼業の今後

  今回のアジア経済の混乱により、ASEANでは1,000万t近い粗鋼生産設備の増強計画が頓挫した。需要が成熟化し過剰設備が存在するもとでは、世界最大規模の輸入超過にあるASEANといえども、巨費を要する高炉・電炉などの上工程設備を一から建設していては採算は取れない。今後アジア市場における日本の鉄鋼業は、高付加価値製品の他に鋼塊・半製品の供給源としての役割が増大すると思われる。
日本の高炉各社は、ライバルである中国鋼鐵、浦項綜合製鉄に収益力・財務の安定性で大きく水を開けられている。鉄鋼市場での地位を維持していくためには、さらなる事業のリストラクチャリングが求められる。

(山田)

図 日本の高炉5社と世界主要鉄鋼会社の競争力比較

表 最近見られた再編の動き



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