調査レポート

[産業界の動き]製紙業界

リストラ・再編の動き

1.需給動向

 紙・板紙需要は94年以降順調に増加してきたが、国内景気の低迷が続く中、98年の紙出荷量は17,830千トン(前年比1.9%減)、板紙は12,046千トン(同4.7%減)とそれぞれ5年振りに前年を割り込んだ。業界大手は95年以降設備増強を進め、97年〜98年に新マシン9台(年産能力1,730千トン)が稼働したが、需要減少の中での設備能力増が在庫・設備過剰感を強め、市況は大幅に悪化した。

2.主要企業の業況

 販売数量減と販売単価下落により業界各社の98年度業績は大幅に悪化した。上場大手8社合計の数字で見ると、売上高は前年比11.9%減の25,714億円と大幅減収となり、経常利益も前期の1,069億円から47億円へと1,000億円超も減少し、さらに税引後利益は▲418億円と大幅な赤字に転落した。
99年に入ると、景気対策の効果等により景気回復感が出てきたことから、紙・板紙の出荷も99年2月以降増加に転じ、99年1〜8月の出荷は紙が前年同期比3.7%増、板紙も同1.3%増となっている。各社は秋以降10%以上の洋紙価格引き上げを需要家と交渉中であるが、値上げはある程度受け入れられる見通しである。
また、業績建て直しのために王子製紙、日本製紙、レンゴー等主要各社は99年春以降、設備廃棄、人員削減をも含む踏み込んだリストラ策を次々に発表しており、これらの費用削減効果ともあいまって、下期以降売上・利益の回復が期待される。

3.業界再編の動き

 90年代以降海外大手紙・パルプ企業の活発な合併・再編の動き等を背
景に、国内製紙業界でも統合・再編が進んできた。
93年に日本製紙(十條製紙と山陽国策パルプが合併)及び新王子製紙(王子製紙と神崎製紙が合併)が発足し、さらに96年10月に王子製紙(新王子製紙と本州製紙が合併)が発足した。その後97年10月に日本板紙(日本紙業と十條板紙が合併)が発足した。 そして、99年4月にレンゴーがセッツを合併し、中央板紙の王子製紙傘下入りが発表され、さらに99年10月に高崎製紙が三興製紙と合併し、高崎・三興が発足している。
このように、国内製紙業界では王子製紙、日本製紙、レンゴーの3大グループを軸とした集約化が進行してきたが、大手については当面再編は一段落したものと思われる。

4.今後の展望

 98年は設備能力増強後の需要の落ち込みにより需給ギャップが生じているが、最も能力増の大きかった印刷・情報用紙のネット能力増(新設見合いで停止した設備を除く)は750千トン程度(98年印刷・情報用紙生産量の7%弱)と言われており、今後の需要増加率を仮に年平均2%とすれば約3年間で吸収可能である。業界大手は過剰設備の停止・廃棄(王子製紙:年産能力の3.3%、180千トン、日本製紙:同約4%、約160千トン等)を発表している。国内景気の底打ちもあって、設備過剰感は今後薄れ、製紙業界の収益環境は短期的には回復に向かうものと思われる。
しかしながら、需要が増加している時期には表面化しなかった企業間の収益力格差が、今回の需要落ち込みにより顕在化している。リストラ計画等の今後の進捗度合によっては、収益力格差が広がっていく可能性もある。
また、2004年の紙・板紙の関税の完全撤廃等規制緩和の進展により、今後国際市況の国内市況に対する影響が強まる見通しであり、各社は一層の国際競争力の強化を迫られよう。
近年の欧米大手製紙企業の合併・事業再編においては「大型化・集約化」と「専門分野への特化」がキーワードであるが、これはそのまま国内製紙業界の再編にもあてはまる。競争激化の中、今後、得意分野において専門化・独立を志向する先と業績・財務不芳先を中心に大手の傘下に身を投じて生き残りを図る先に分かれていくものと見られる。

(塙)

表1 紙・板紙出荷動向

表2 製紙上場大手8社業況推移




Copyright (c) 2003. The Sumitomo Trust & Banking Co.,Ltd. All rights reserved.