調査レポート

[産業界の動き]建設

建設業界の展望

1.本格化するリストラ

前期の決算では不良債権、不良資産の処理、有利子負債の削減など財務体質の改善・強化を進めるために巨額の特別損失を計上するゼネコンが相次いだ。また、財務体質改善の原資に乏しい一部のゼネコンでは債権放棄など金融機関の支援を受けて体質改善を進めた。
各社がこのような思い切った財務リストラを敢行したのは、東海興業など上場ゼネコンの破綻を引鉄として膨らんだゼネコンの資産内容に対する疑念を払拭し、市場の信任を回復することが狙いであった。また、連結会計、不動産への時価会計の導入、退職給付債務のバランスシート計上、工事収益の認識基準の完成基準から進行基準への移行など、会計基準の国際化が間近に迫っていることも各社に決断を急がせた。
前期の決算では、自己資本の取崩しや含み益の吐き出しによるバランスシートの健全化が中心であったが、今期は建設需要の減少により収益環境が急速に悪化していることを受けて、人員削減など経費圧縮によるPL面のリストラを各社とも本格化させている。

2.縮小が続く建設需要

10月に発表された日本建設業団体連合会加盟64社の平成11年8月の受注総額(速報)は前年同月比で▲8.0%と5ヶ月連続のマイナスであった。また、同時に発表された今年度の受注見通しは前年同月比▲5〜▲10%と回答した企業が27社で最も多かった。前回4月の調査時点では前年同月比0〜▲5%の回答が最多であったことから下方修正した企業が多いことがわかる。
建設省が今年7月に発表した「建設業再生プログラム」では、わが国の建設投資は、(1)景気が回復した後も、民間投資の大幅な伸びは見込めないこと、(2)公共投資の伸びについては財政面からの制約も懸念されること、(3)長期的には、欧米のように貯蓄率の低下から投資余力がなくなると見られること、(4)比較的規模の大きい新規建設の市場は伸びは見込めないことなどから、全体としては弱含みで推移すると見られている。

3.価格競争の激化

受注が完成工事高を下回る状態が続き、どこまで需要が減少するのか底が見えない状況にあるため、目先の受注を確保する必要性から価格競争は激しさを増しており、各社の利益も圧縮される傾向にある。
また、発注システムに対するニーズの変化、つまり、発注者とゼネコンの責任範囲の明確化、外注費を含めたコスト構造の明確化する必要性から、特命発注から競争入札へ、一括発注から分離発注やCM(コンストラクション・マネジメント)を導入する機運が膨らんでいることが、大手ゼネコンにとっては収益圧迫要因になると懸念されている。
建設技術の汎用化により大手ゼネコンでなければ施工できない分野は限定され、中小ゼネコンで施工できる分野は拡大しているが、労働力の確保や一般管理費の面では中小・地場ゼネコンの方がコスト競争力が高い。汎用技術で対応できる施工部分を中小・地場ゼネコンに分離発注すれば建設コストは更に低減できると考えられる。

4.今後の動向

如何にしてコスト競争力を身につけるかが大手ゼネコンにとっての当面の課題であるが、下請や資材業者に対して一方的に単価切り下げを要求するのではなく、技術力に基づく生産性の向上や建設資材の流通合理化などを進めることが必要である。
また、建設市場で新たな需要が見込める分野として、(1)防災・景観など都市環境の改善、(2)省エネ、産業廃棄物処理施設など環境対策、(3)福祉施設、バリアフリーなど高齢化社会への対応、(4)ITS(新道路交通システム)、光ファイバー敷設など情報化への対応、(5)潜在的な成長力の高いアジア地域など海外の建設市場、(6)CMなど施工管理業務、(7)PFI(民間資金による社会資本整備事業)など公的な業務、(8)既存施設の維持・更新サービスなどの建設関連業務、(9)不動産の証券化の際に必要となる建築物の評価業務などが注目されている。
これらサービスや企画、提案、設計などのソフト業務は、従来の完工高至上主義の下では、受注を目的に無償で提供されてきたものも多い。これらの業務を施工と切り離し、適正な対価が取得できる業務に転換することが今後の課題である。
いち早くリストラの目処をつけたゼネコンがこれらの分野で主導権を握ることになろう。

(中江)




Copyright (c) 2003. The Sumitomo Trust & Banking Co.,Ltd. All rights reserved.