|
[産業界の動き]通信
|
|
データ通信に活路を見出すPHS業界 |
| 1.加入者底打ちの兆し PHS(Personal Handy-Phone System)は95年7月のサービス開始から2年間で約700万台を販売したものの、97年9月以降、加入者の減少が続いてきた。携帯電話の相次ぐ値下げにより、携帯電話と比べ当初月1万円程度割安であった利用料金が月2,000円程度の格差にまで縮小したことに加え、高速移動時の通話が途切れやすく、通話可能エリアが狭くリゾート地など郊外での通話に問題があった。さらに、導入時に各社が極端に安い端末を市場に投入したことがPHSは携帯電話の下位機種とのマイナスイメージを生むとともに、もともと使う気のなかった利用者にまで販売したことが大量の解約に繋がった。 加入者が減少していく中で、業界各社の事業体制の見直しも相次いだ。NTTパーソナル通信網9社はPHS事業をNTT移動通信網9社へ譲渡のうえ清算され、アステル10社のうち北海道・東北・関東・九州の各地域会社は、同じ電力会社系の地域通信会社との合併などで事業を継続する体制に切り替え、DDIポケット9社は統合されて全国1社体制になった。 こうした業界再編を背景に、足許では、基地局増設による通話可能エリアの拡大やPHSの商品性を活かした新サービスの登場で加入者減少に歯止めがかかり、単月ベースでは99年12月から2ヶ月連続して増加に転じている。 2.見直されるPHSの商品性 携帯電話と比べ、PHSは通信コスト・消費電力・通信速度などの面で優れており、端末により異なるものの、携帯電話と比べ通信コストで約10分の1、消費電力で約3分の1の水準である。通信速度では携帯電話の約6倍にあたる毎秒64キロ・バイトの高速通信が可能であり、2000年度中には毎秒128キロ・バイトの高速通信が可能な端末も投入される予定である。 一方、2001年に登場する次世代携帯電話IMT-2000(International Mobile Telecommunications)では毎秒2メガ・バイトの通信速度が可能となる。大容量データ通信を必要とするゲーム・音楽などのソフト配信やカラー動画像配信も商用化が進み、移動体通信機器によるデータ通信需要が本格化するとみられる。IMT-2000の登場によりPHSの高速通信機能という強みはなくなるが、IMT-2000の周波数帯が数年後には音声だけで満杯になるとの見方も一部にあり、現行の携帯電話と比べ通信コストや消費電力に秀でたPHSが、今後IMT-2000を補完するデータ通信端末として利用される可能性が高まっている。 3.各社の戦略 業界首位のDDIポケットは99年7月に高速データ通信が可能な新型PHS「エッジ」を発売した。「エッジ」は移動通話中に最適な基地局を即時に選択する機能を高め、通話が途切れやすいという従来のPHSの弱点をカバーした。さらに、PHSではなく「ハイブリッド携帯通信」というネーミングで発売するなど、PHSを携帯電話の対抗機として位置づけ、首都圏を中心にデータ通信機能を重視する新規顧客をターゲットに6ヶ月間で56万台を販売した。2000年1月からはPHSによるインターネット接続サービスも開始している。 NTT移動通信網は99年4月にPHSと携帯電話の複合端末「ドッチーモ」を発売した。さらに、GPS(Global Positioning System)による位置測定技術を応用し、犬・猫などのペットや子供などの居場所を検索できる位置情報サービスも開始、2000年春には、ソニーや松下通信工業と共同でPHSによる音楽配信サービスを開始する予定であり、用途拡大によりPHSの新たな需要の開拓を目指している。 アステルは、株主である電力会社主導で、事務所や工場などの内線電話をPHSへ切り替えることで法人需要の獲得を進めている。地域各社間での連携強化も課題とみられてきたが、2000年夏に各地域会社が共同してインターネット接続サービス事業を開始するなど連携強化の動きもみられる。 各社とも通信コスト・消費電力に優れたPHSの商品性を活かし、携帯電話も含めた移動体端末の中でサービス面での差別化を図っている。今後はノートパソコンや携帯情報端末を利用するビジネスマンなど利用時間の長い優良顧客をターゲットに新規加入者を獲得し、底打ち感の出てきた加入者を引続き増加させることが重要である。 (岩切) |